ブックタイトルkouren669

ページ
18/28

このページは kouren669 の電子ブックに掲載されている18ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

kouren669

翌月に沖縄県と発明協会沖縄県支部との共催で那覇市で商標についての講演会が開催されることとなった。しかし、異議申立書の提出を報じた新聞に「ちんすこう三つどもえ争い」との見出しの記事が掲載されたのを見た県当局の方から「具体的な紛争が起きている事件の一方の代理人となっている弁理士の講演は好ましくない。」との意向が示されたということで、その講演は延期されることとなった。 上記のように商標権の重要性を知った多くの方々からの要請で、この年には、思いがけない二つの講演会が催された。 その1は、沖縄国税事務所からの依頼である。国税事務所から「県内の泡盛業者に集まって貰うので、そこで商標の話をしてほしい。」との依頼を受けた。会場は浦添市にあった北那覇税務署であったが、用意された椅子が足りないほどの聴衆で立ったままの方もおられるほど盛会であった。現在では、沖縄県で販売されている商品で商標が付されていないものは見られないと思うが、県内で最も商標に意を用いているのは酒造業者ではないだろうか。これは、最も早い段階で商標の重要性に着目した沖縄国税事務所の配慮も影響しているのではないかと思っている(*3)。 その2は、県の教育研究所からの依頼である。私には北中城高等学校長を最後に定年を迎えた従兄弟がいるが、彼が教育研究所在任中に知財の重要性を上司に説明したことから実現したもので、県内の小・中学校の校長・教頭を対象に話してほしいということで、確か東町にあったビルの会議場のようなところで話をした。ここでも、用意された席に空席は無く、質問も出て楽しい会であったという印象が残っているが、参加して下さった先生たちが、その後の教育にどのように役立てたかは聴いていない。(*3)私は、職業柄,旅行の際には、出来るだけデパートその他小売店に展示されている商品を見るよう努めている。初めての沖縄行の帰りに何か土産物をと市内を歩いたが、菓子をはじめ加工食料品の殆どに商標は付されていなかった。大体の袋入り商品には、その商品の普通名称が中央に大書されていて、下方に小さく製造(販売)業者の名が書かれているだけであった。その日は、土産の一つに「胡麻菓子」と書かれた袋菓子を何となく買い求めた。そして二度目の出張の際に家内からその「胡麻菓子」のリクエストがあったので、幾つかの店で同じ胡麻菓子を探したが、街中でも空港の売店でも「胡麻菓子」と表示された商品は幾つかあったものの、結局,目的とする商品を入手することが出来なかった。今の若い方々にとっては信じられないであろうが、凡そ50年前の沖縄では、これが普通のことで、このような状況が大分続いていたと記憶している。そのため、以後、度々開かれた講演会では、例えば、包装された商品の表面に月の雫(山梨県の菓子業者が実際に使用していた葡萄の加工品)と表示してあるものを示し、これと単に商品の普通名称が記載されている商品とを対比して、これが、商品の出所表示や顧客吸引力に及ぼす影響を話すようにしたところ、受講者の殆どが大きく頷いていたので手ごたえを感じたのを覚えている。 ところで、前述の「ちんすこう」の出願公告に対する異議申立であるが、当方の主張に対する答弁書の提出が無く気になっていたところ、その年の10月頃になって、特許庁から同年6月9日に出願が取下げとなったとの通知を受け事件はあっけなく決着した。「ちんすこう」事件は沖縄県にとっては初めてのケースで良く知られているが、次にこれ以外の商標関係の出願公告の対応とその結果を数件挙げておく。それぞれの事件の出願公告の時期等には幅がある。【うちなわむち】  滋賀県大津市の菓子業者が「餅菓子」を指定して出願し出願公告となったが、那覇菓子工業協同組合からの異議申立ての結果、出願は拒絶査定となった。【そーきすば】   千葉市の個人の出願で「そば」を指定して出願し出願公告となったが、異議申立に先立って取り下げを勧告したところ、応じて出願を取り下げた。【山 原,やんばる】  鹿児島県の酒造業者S社の出願で「酒類(薬用酒を除く)」を指定した商標が出願公告となったが、沖縄県北部酒造組合ほか11社(人)の異議申立により、出願は拒絶査定となった。しかし、出願人は査定不服の審判請求をし、これが排斥されると更に東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起し、請求棄却の判決がなされると最高裁判所に上告するなど相当粘ったが、結局,上告棄却により拒絶査定が確定した。(次回9月号に続く)OKINAWA INDUSTRIAL FEDERATION NEWS 16