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概要

kouren652

琉球大学工学部工学科電気電子システム工学コース・准教授原田 繁実harada@eee.u-ryukyu.ac.jp賢い電気の使い方を目指して 私たちの生活に欠くことの出来ない電気は、貯めることが出来ないため、使う量と作る量が常にバランスするように調整されています。私たちのように電気を使う側は、基本的に使いたい時に好きな量の電気を使います。そこで、電気を作る側がバランスが取れるように調整を行ってきました。そのためには、電気を使う量が少ない季節・時間には殆ど活用されない電力設備が必要です。もし、電気を使う側が時間をずらしたり、需要が多い時間に使う量を減らしたりすることが出来ると、社会全体として電力設備の無駄を減らすことが出来るようになり、コスト削減に繋がります。情報通信技術が発達し、各家庭にも高速な通信回線が常時接続するようになった現代では、使う側の協力が実現可能になりました。そこで、次世代の電力の供給システムであるスマートグリッドでは、電気を使う側も積極的に使う量を調整することが想定されています。例えば、需要が高く発電設備の余裕が小さくなった時に電気料金を上げることで、需要を抑制しバランスの調整に貢献することが期待されています。 私たちの研究室では、需給バランスの調整にも役立つような、「賢い」電気の使い方を実現するための仕組みを研究しています。 電気の使い方を変えるためには、基礎データとして使い方を詳細に記録する仕組みが必要です。そのために、コンセントに接続された機器の消費電力を記録でき、電流の大きさ・高調波成分の比率などから接続されている機器の種別も判定できる仕組みの開発に取り組んでいます。 つぎに、電気の使用は人間の何らかの活動の結果となりますので、使われている電気と使っている人を結びつけることが必要です。そのために、赤外線センサなどを用いて、人の移動を検出し、機器の設置場所の情報と照らし合わせることで誰がどの機器でどれだけの電気を使っているかを割り当てる仕組の開発を行っています。電気の使い方を把握することに加えて、空調の制御により電気の使用量を調整する仕組みの実験も行なっています。省エネのための空調設定温度は冷房28℃などとよく言われますが、実際には設定温度と室温は一致しません。さらに、人の快適性は、着衣量や空気の流れ、放射温度など室温以外の影響を受けます。そこで、統計的に考えられている快適性の尺度であるPMV(予測温冷感申告)を維持しながら、ピーク時間帯に使う電気を減らすような空調の制御システムを実験しています。さらに快適感の個人差を考慮するために、皮膚温と快適感との関係を調べており、皮膚温度の変動が快適感と対応することが確認できています。 研究成果の具体例として、コンセントに接続された機器の識別方法について説明します。このシステムでは、交流1周期につき16点の機器の電圧・電流を計測し、そのデータから有効電力、電流の最大値・実効値、電圧と電流の位相差、高調波成分などの特徴量を算出します。 これらの特徴量をRandom Forestと呼ばれる方法で学習させ、決定木を複数作成します。決定木とは、「電流の最大値が1A以下で、180Hzの高調波成分と60Hzの成分の比が0.2以上であれば、接続している機器は充電器である」のようなルールをトーナメント表のような図で表したものです。 識別させる場合には、特徴量を予め学習により作成した決定木に当てはめて機器の種別を判定します。11種類の異なる種類の家電製品の識別を行なった結果、100%識別させることが出来ました。 このように、コンセントに接続された機器が識別出来ることで、家庭やオフィスでの電気の使用状況を細かく把握でき、「賢い」電気の使い方に貢献することが出来ると考えています。こうした取組により、より「賢い」電気の使い方を模索していきます。連絡先: 琉球大学工学部工学科電気電子系内米須 章(電気システム工学コース)/山里 将朗(電子情報通信コース)〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1番地TEL.米須 章(098-895-8692)・山里 将朗(098-895-8679) FAX.098-895-8708(電気電子系事務室)【E-Mail】kouenkai-office@ml.tec.u-ryukyu.ac.jpコンセントの電圧・電流計測学習モード特微量の算出●電流最大値・実効値・平均値 ●有効電力●電圧と電流の位相差 ●電流の高調波成分 など…機械学習 Random Forest●正しい機器を人間が入力し 機器と特微量の関係から 複数の決定木を作成機械学習 Random Forest●学習モードで得られた複数の 決定木の出力の多数決●未知の機器の場合は、機器の 種別の入力を促す識別モード11 OKINAWA INDUSTRIALFEDERATION NEWS