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概要

kouren09

琉球大学工学部 電子情報通信コース・教授 長田 康敬016 年8 月号の工連ニュースに掲載されてちょうど1 年目に再度,執筆する機会を得ました.今回は,何らかの事故や病気で発声がうまくできず,コミュニケーションが通常のようにいかない方々の発声の音響モデルを検討し,発声の特徴を明らかにすることによってこれを補い,音声認識を行なって,それから好みの声で音声合成をするシステムの構築についてお話いたします.人の音声は,肺から押し出された空気が声帯の制御によってパルス波あるいは雑音になり,それが口と鼻からなる声道で共振して生み出されます./a/や/i/といった音素の違いは口の開き具合や舌の位置といった声道の変形から生じ,声道の形の違いは音声波の共振周波数の違いとして現れます.共振周波数は音声信号をフーリエ変換してスペクトルにしたときスペクトルの山(ピーク)を観測することで得られます.このスペクトルの山をフォルマントと呼び,周波数の低い順に第1 フォルマント,第2 フォルマント,…といいます.このフォルマントの位置が音素を識別するのに有用な情報であり,発声障害がある場合にはあるフォルマントが消えたり,位置が大きくずれたりします.(障害という言葉はあまり好きではありません.)発声障害によるしわがれ声のことを嗄声(させい)といいます.日本音声言語医学界でGRBAS 尺度が提言されており,嗄声の全体の程度をG(grade), 嗄声の内容・特徴を粗造性R(rough),気息性B( b r e a t h y ) , 無力性A ( a s t h e n i c ) , 努力性S(strained)という特徴を表しています.健常者の母音のフォルマント分布は図1 のようになっており,きれいに分離されているのが分かります.ここで測定点は男性の各母音ごとに20 点測定しています.図2 には粗造性のフォルマント分布を示してあります.フォルマントの衝突が見られ,これにより音声認識率が低下するわけです.その他の気息性, 無力性, 努力性についても実験・検討を行いました.図3 は音声認識システムの全体を示しています.きれいな女性の声でしゃべる叔父様が出るかもしれませんね. 最後に,実験・プログラムを遂行してくれた伊波祐哉院生に深謝いたします.2連絡先: 琉球大学工学部工学科内天久和正(エネルギー環境工学コース)/神田康行(機械工学コース)〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町字千原1番地TEL.天久和正(098-895-8624)・神田康行(098-895-8631)FAX.098-895-8636(機械工学コース・エネルギー環境工学コース 事務室)【E-Mail】kouenkai-office@ml.tec.u-ryukyu.ac.jp発声障害の音響モデル構築および単語認識琉球大学工学部後援会からのお知らせInformation ngt@eee.u-tyukyu.ac.jp図1 健常者の母音のフォルマント図2 粗造性の場合のフォルマント図3 音声認識システムOKINAWA INDUSTRIAL 10FEDERATION NEWS